オリジナルの物語設定
異世界スキル雑貨店
読み始める →原題: 异世界技能杂货铺
天野悠は、スキルを売買できる大陸へ召喚された。持っているのは「開店」というスキルただ一つ。王都の片隅に雑貨店を構え、誰にも要らない廃スキルを買い集め、誰も見たことのないデッキへと組み上げる。ある日、競売にかけられた少女が、唯一のスキル「忠誠」をカウンターに置く。悠は言った。「忠誠は売らない。君自身は、店員として残っていい。」こうして小さな店は、大陸の物価と戦争を書き換え始めた。
オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。
紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:
物語
序章 開店スキル
天野悠が降り立ったとき、システムが与えたスキルはひとつだけだった。開店。
炎もない。聖剣もない。「魔王へのダメージ+300%」もない。開店の説明は一行だけだ。任意の場所にカウンターを設置できる。
彼は王都のいちばん隅、壁の根元にカウンターを置いた。初日、客は来ない。二日目、猫が一匹来た。三日目、その猫が錆びついたスキルカードを一枚、台の上に置いた。【ナイトビジョン(破損)】。
悠はそれを買い取った。対価は魚の半身。大陸の物価に、小さく、決して埋まらない裂け目が生まれた。第一章 王都の隅のカウンター
廃スキルは木箱の中に積まれていた。誰にも要られない冬のように。
悠は【ナイトビジョン(破損)】と【耳鳴り】を組み合わせ、【闇の中の足音が聞こえる】を得た。最初の本物の客は盗賊だった。支払いは早く、去り際に言った。「あんた、戦争を書き換えるぞ」
「書き換えるのは在庫だけだ」悠は銅貨を壺に入れた。
カウンターは低い。夕日がその影を長く引き、どこか別の場所へ続く道のようにした。悠は歩かなかった。開店スキルのクールタイムは「決して閉店しない」。第二章 売らない忠誠
競売にかけられた少女が【忠誠】をカウンターに置いたとき、会場の全員が高値を待っていた。
悠はカードを見て、それから彼女を見た。「忠誠は売らない」
「では何を買い取る?」競売官が冷笑した。
「彼女本人だ」悠は求人板に「店員」の二文字を書いた。「給料は一日三食と、カウンターの後ろで寝ること。スキルカードは自分で持っていろ。忠誠は棚に置くより、身につけているほうが値打ちがある」
少女の名は琳。カードを取り戻すとき、手は震えていた。目だけが、明るかった。第三章 物価と戦争
戦争が値を上げはじめたとき、先に上がったのはスキルカードだった。
将軍が【集団鼓舞】を買いに来た。悠は首を振った。「品切れだ。棚にあるのは【兵士を家に帰して飯を食わせる】だけだ」
将軍は怒り、剣を抜いた。琳が【忠誠】をカウンターの前に立てると、切っ先はカードの面を滑り、別の金属に触れたように逸れた。
「うちは雑貨屋だ」悠は茶を押しやった。「茶は無料。戦争は別の窓口に並んでくれ」
その夜来たのは猫だけだった。猫は新しい廃カードを一枚引きずり込んだ。【停戦(試用三時間)】。悠はそれを看板商品として仕入れることにした。第一章 スキルカードの組
スキルカードの組は、琳が言い出した。廃カード五枚を季節の順に並べると、「通り一本の灯を同時に灯す」が打てる。
一度試した。王都の隅は昼のように明るくなり、屋台の主人は日の出が早まったと思い、肉まんを二釜蒸した。
「これも売れる」琳が言った。
「これは自分たちのために取っておく」悠はカードの組を引き出しに収めた。「店が明るくなければ、客は『売らない』の一行を見られない」第二章 帰り道は売らない
帰り道を買いに来た者がいた。スキル名はそのもの、【召喚される前に戻る】。値段は城ひとつ。
悠はそのカードを、長く見た。琳は声を出さなかった。
「帰り道は売らない」彼はカードを押し戻した。「俺は店を開いている。店を開いている人間は、カウンターのない場所に戻る必要がない」
来客が去ったあと、琳は【忠誠】を彼の手のそばに置き、また取り上げた。「まだここにあるか、確かめただけ」彼女は言った。終章 雑貨屋はまだ開いている
雑貨屋はまだ開いている。戦争は三度止まった。一度につき三時間。三度を重ねれば、多くの人間が家に帰って飯を食うには足りる。
悠は開店スキルの説明をもう一度読んだ。説明に、小さな一行が増えていた。カウンターは、好きな人に照らされる。
琳は奥で木箱を数えていた。猫は【停戦】の上で眠っている。夕日が影を道に引き伸ばし、今度その道には、二組の足があった。
「明日、仕入れだ」悠が言った。
「何を?」
「誰も要らないけれど、人を生かしておくものを」
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