オリジナルの物語設定
ゴーレム×少女
読み始める →原題: 魔像怪×少女
ゴーレム×少女。挿絵。出典:https://www.bilinovel.com/novel/1689/114198.html
オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。
紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:
物語
# 魔像×少女
## 挿絵















## 全一冊
第0章 ナナフシの片想い
今日もいつもどおり、放課後になると二階の図書室へ行き、いつもの席——窓際、後ろから数えて三番目の机——に座り、眼鏡を外して長く息を吐く。張りつめた気持ちを、少しずつほどいていく。
いまは六月の初め。運動部は地区大会に向けて本格的に動き出していて、最近この図書室に来る生徒は少ない。そのことが、ひどく安心だった。背の高い本棚が列をなしてそびえ、机の脇には仕切りがある。誰の視線も気にしなくていい。僕にとって、ここだけが息を抜ける場所だった。
放課後にここに座る目的は、勉強でも、休息でも、時間つぶしでもない。どの部にも入っていない僕が、嫌いな学校にわざわざ残ってそんなことをするはずがない。本当の理由は——片想いしている女の子を見るためだ。
図書室の窓からは、校舎前の広場がよく見える。部活を終えて帰る彼女を、ここで待って眺める。それが、もう習慣になっていた。
名前は干琴子。中三のときに知り合い、いまこの学校で僕のことを知っている生徒は、彼女だけだ。
一日に一度、彼女の姿を見ることだけが、学校生活の楽しみだった。彼女が休んで姿を見られない日は、一日の疲れが倍になって押し寄せてくる。
自分でもわかっている。これは相当に危ない、ストーカーに近い行為だと。女の子は視線に敏感で、男が自分のどこを見ているかなんて、いつも気にしている。おとなしい干だって、例外であるはずがない。もし干が……(コンテンツの読み込みに失敗しました。更新するか、ブラウザを変更してください)
## 挿絵

















## 第0章 媛の報告書
1
《千葉美国の物語・その1》
夏休みだというのに、陸上部のマネージャー仕事で夕方までかかりきりだった。マンションの玄関まで来ると、体じゅうが火照っていて、一刻も早くシャワーを浴びたかった。
すべすべした静脈認証装置に掌を乗せると、ピッ、と音がして文字盤が緑に変わり、錠前がカチャリと開く。教授がこの装置を研究用の監視モニター代わりにしている意味は、わかっている。つまり、この家には肉体を持たないものは住んでいない、ということだ。
「ただいま」扉を開けて言ってから、思い出した。「——あ、教授は出張中だった」
代わりに答えたのは、背後で閉まる扉の金属音だけだった。
郵便受けに大きな封筒があるのに気づき、取り出してみる。かなり重い。中には分厚い書類が入っているようだ。夕暮れの残光で差出人を確かめると、片倉媛——先日、教授に会いたいと連絡してきた女の子だった。
——これ、もしかして……!
革靴を脱ぎ、居間へ向かう——なんだか気になって、また戻り、靴を揃えてから、改めて焦るように居間へ歩いた。
——もしかして、もしかして……前に言っていた報告書?
電話で彼女は、ある魔像の精神を「卵」へ移す実験が成功した、と言っていた。そんな実験は、おそらく教授ですらやったことがない。そもそも、教授以外に操形学を研究している人間はいないと思っていたから、聞いたときはずっと信じられなかった。
でも、これだけ分厚いものを送ってくるなら、いくらなんでも嘘ということはないだろう?
「あ!」
——開けてしまった……(コンテンツの読み込みに失敗しました。更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第1章 高空の花火
1
《千葉美国の物語・その2》
——うんっ! 今日もいい天気!
窓を全部開け放ち、朝の空気をいっぱい吸いこんで、大きく伸びをする。
遠くに見える太平洋はきらきらと光り、大きなフェリーの姿も見えた。
今日はとても気分がいい。天気がいいだけじゃない。須弥が朝から掃除を手伝いに来てくれているからだ。
「ごめんね、須弥。夏休みなのに手間をかけさせて」
「いいよ……どうせ家にいたくないから」
彼はテレビをつけ、野球の実況を流している。
「え〜、こんな早い時間から試合があるんだ」
「第一試合は八時開始だよ」
「でも、掃除機かけるよ」
「うん……」
休日の朝、居間で野球中継を見ながら、上の空で相槌を打つ。まるでおじいちゃんみたいだ。もちろん須弥はおじいちゃんではない。上の空なのは、報告書を読んでいるからだ。
「それ、須弥にとっても難しいの?」
「……突破してるところが、かなり多い。教授の本にも、こういう概念は出てこない」
「媛って人、やっぱりすごいんだね」
「中身はたしかにすごい……でも……」彼は報告書をテーブルに置き、こちらを見た。「僕が知っているのは、この報告書だけだ。書いた人間がどういう奴で、なぜ操形学を研究しているのかもわからない。本当に頼んでいいのか?」
「奴、なんて言わないの……。心配なのはわかる。だから今日、知るために呼んだの。電話の感じだと、悪い人には思えなかったし」
「うん」彼の視線は、また報告書へ戻っていった……(コンテンツの読み込みに失敗しました。更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第2章 ダイヤモンドの思い出
1
焼肉、花火、眠らない山……美国が用意した歓迎の行事は、すべて幕を閉じた。ちゃんと話が通じるかどうか心配していたけれど、どうにか無事に済んだ。
そのあと交代で風呂に入り、アイスクリームを食べながら、居間で気楽にしゃべった。
最後は、男子が布団を持って居間へ、女子は廊下の向こうの和室へ、それぞれ別れて寝た。和室からは、時折笑い声が聞こえてくる。
——なぜ山県も、ここで泊まるんだ?
いまさらその疑問を思い出した。ただ、男が二人きりでも、口には出せない。自分が他人に干渉されるのを嫌うように、彼だって嫌だろうから。……でも、こうも思った。もし彼が僕と同じなら、彼にも、僕に聞きたいのに聞けないことがあるんじゃないか。
女の子たちに比べて、こっちはほとんど会話がない。この沈黙に耐えられないのか、彼は部屋の明かりを半分消し、テレビ台の下からゲーム機を取り出して遊び始めた。僕も昔やったことのある、異世界タクティクスのシミュレーションゲームだ。
「これ……」山県は画面を見ながら口を開いた。「やったことある?」
「ああ、ある。かなりハマった」
「このゲームの魔像、あんまり役に立たないんだよな」
「……そうだね。あまり役に立たない」
「僕はここまでしか進めなくて。魔像って、レベル変えられるのか?」
「できない。前作はできたけど、今作はダメだ。ダンジョンで敵として出てくるだけ」
「そうか……僕は、どうしても使いたいんだけど」
「ゲームの途中から終盤にかけて、手に入る、使えるようになる……(コンテンツの読み込みに失敗しました。更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第3章 鏡と虹
1《千葉美国の物語・その4》
「あ、あ! ここにいたの! ずっと探して——」
「よう」
唯は返事をしながら、無表情のまま手を挙げた。
……マネージャーの仕事を終えて、広い校内をあちこち探し、やっと談話室で彼女を見つけた。廊下のくぼんだ場所にあり、テーブルと長椅子、観葉植物、紙パック飲料の自動販売機が置いてある。休日でなければ、いつも生徒がそこで談笑している。でも今日はまだ夏休みの最中で、いるのは唯だけだった。彼女はストローで紙パックの牛乳を、のんびり飲んでいる。わたしは少したまりかねて息をつき、壁の水道で手を洗い、りんごジュースを買った。今日は曇りなのに、昼だというのに、自販機の光がかなりまぶしい。彼女の向かいに座り、ストローを刺す。
「仕事、終わった?」
「うん。そっちは?」
「鍵のかかってないところは、だいたい見て回った」
「どう? わたしの学校、なかなかいいところでしょう?」
「……まあまあだな」唯は遠くを見て、少し考えてから言った。「かなり新しい。高校って感じがしない。総合病院か、前に見学した大学みたいだ。つるつる光ってて、高校生特有の生活感がない。まあ、汚いよりはマシだけど」
「唯の学校には、生活感があったの?」
「もう、そこには通ってないけど」
「あ、ごめん……」
自動販売機が、ブンブンと音を立てている。
「生活感なんて、聞こえはいいけど、古い学校だから、みんなだらだらしてて、緊張感がなくて、「ちょっと気を抜くと……(コンテンツの読み込みに失敗しました。更新するか、ブラウザを変更してください)
## 第4章 仙N棒
1《千葉美国の物語・その5》
媛の学校は、あと三日で始業だ。東北の夏休みは短くて、冬休みが長いらしい。
実験はすでに二度失敗している。そのたびに「呪紋」を大きく直さなければならない。今日また失敗したら、媛は学校を休むことになるだろう。彼女をこんなに長く引き留めたくない。……今日こそ、成功してほしい。
太陽が高い正午を過ぎ、三度目の実験が始まろうとしていた。部活から戻ると、和室には「呪紋」をびっしり描いた模造紙が三十二枚、すでに用意してあった。琴子のときより少ない、と聞いている。
——唯の姿が見えない。須弥と媛が準備で忙しそうだったので、探しに行った。やがてバルコニーで見つけた。まぶしい日射しで暑い場所で、携帯電話で話している。……家の電話でいいじゃない。
「……うん……そう、今日やる。そっちもよろしく。じゃあ、バイバイ——」
ちょうど話し終えたところだった。
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