オリジナルの物語設定
神栖麗奈はここにいる
読み始める →原題: 神栖丽奈就在此处
俺には友達がいない。別に人嫌いなわけじゃないし、人を信用していないわけでもない。面倒くさいからでもなければ、友達が欲しくないわけでもない。ただ
オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。
紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:
物語
## 第一章 斉藤楓未
+翻訳:bild 小炎 咩咩 楽園 隠士魚
+校正:小藍
+潤色:水戸夕歌
+配信:水戸夕歌
1
私には友達がいない。
人嫌いだというわけでも、人を信用していないわけでもない。面倒くさがりなわけでもないし、友達を作りたくないわけでもない。ただ単純に——作れないだけなのだ。
母は、それで構わない、成績さえ良ければいいと言う。でも、成績が良いことこそ、いちばん役に立たない。友達のできない人間にとって、学校がどれほど苦しい場所なのか、母は知らない。
いまもそうだ。休み時間——私以外の誰もが楽しそうに言葉を交わしている。私だけが、別の次元に取り残されたように、隅に捨て置かれている。昼休みはもっとひどい。みんなが机をくっつけて一緒に食事をしているあいだ、私はひとり黙って食べるしかない。果てしなく広がる海に浮かんだ、見捨てられた孤島のように、喧騒のなかで給食を咀嚼する。
ときどき思う。私以外の人間は、みんな宇宙人なのではないだろうか。人間の皮をかぶって、生き残った唯一の地球人である私を、共謀して騙しているだけなのではないか。
そんなはずはない。ないはずなのに、学校での私は、そんな考えが浮かぶほど孤独なのだ。
授業以外にすることがなく、特に好きというわけでもないのに、一日じゅう本を読むようになった。そのせいで、周囲はだんだん、私を話しかけにくい人間だと見なすようになり、さらに距離を置くようになった。悪循環——結果、私は孤独を愛する人間だと勘違いされて……
## 第二章 木檜篤志
1
心臓が激しく跳ねて、喉の奥から飛び出してしまいそうだ。
ここはどこにでもある駅前の商店街で、ほかの人にとっては、きっと今日もいつもどおりなのだろう。でも私にとっては、目の前で衝撃的な光景が繰り広げられている。
道行く人々が行き交う。
あの、忘れられない奴が、背景でしかない見知らぬ人々のなかに紛れている。
この強烈な衝撃で、私は砕け散り、周囲に付着した。私の欠片が、あらゆる方向から「あいつ」を睨みつけている。「あいつ」は私の視線に気づいたのか、こちらへ目を向け、本体である私をじっと見つめた。
そして、彼女は私に嫣然と微笑んだ。
その表情を見た瞬間、私は崩れ落ちることさえできなくなり、ただ——棒立ちになった。時間という概念までが、彼女の笑顔に吹き飛ばされた。まして感情など、最初からここには存在しなかったかのようだ。
目の前の彼女は、常識を超えている。少なくとも私の知るかぎり、彼女にまともな倫理観はない。
私は、目の前の彼女に呑み込まれた。
彼女が視界から消えていって、ようやく呼吸を取り戻した。自分が生きている人間だと、手応えをもって感じ、同時に、自分のなかに感情があることも確認した。
そうだ、私は——
あの女を憎んでいる。
私のすべてを奪った、この女を憎んでいる。
たとえ彼女が特別な存在で、人間を超えた何かだとしても、私は絶対に許さない。
絶対に許さない、絶対に許さない。家族を殺した殺人鬼を、私は絶対に許さない。
私は絶対に、神栖麗奈を許さない!
2
「神栖麗奈に会ったのか?」
私は自分の……
## 第三章 涌井静
1
頭のなかに三秒と存在しない五十代の男性教師の、日本語なまりの英語を右から左へ聞き流しながら、電子辞書の広辞苑で単語を引く。
【質量保存の法則】
化学変化の前後で、物質の質量の総和は変わらない。一七七四年、フランスの化学者ラヴォアジエが発見。質量が不変であるという法則。
【法則】
①守らなければならない規範。
②いついかなる場所でも、一定の条件のもとで生じる普遍的・必然的な結びつき、およびその結びつきを表す言明。
世界は、偶然と単純とが組み合わさってできている。
普遍的で、必然的な結びつき。そんなものは、世の中のあちこちに転がっているだろう。でも、それを細かく分け、根まで辿っていけば、根本にある普遍的・必然的な結びつきの絶対数は、絶対に多くない。
知っている? 実のところ、いろいろな法則も、中身は同じなのだ。飾りをつけ、名前を変えているだけ。
だから、どの角度から物事を探っても、最後に行き着く場所は同じになる。ある一面を深く究めた人がまとめた言葉と、別の一面を究めた人がまとめた言葉が、しばしば同じになるのにも、理由がある。
つまり、そういう法則の中核を多少なりとも理解していれば、世の中のほとんどの物事がどう成り立っているのかが分かる。
核はすべての中枢だ。核を理解すれば、それをほかの物事にも応用でき、揺るがない認識を打ち立てられる。核は磁石のように、周囲の物事を引き寄せる。
でも、そのことに気づいている人はいない。だから大……
## 第四章 豊科和亮
1
涌井静の遺影は、私が提供した。
私の持っている小静の写真は、誰よりも多い。本人が持っているより多いほどだ。小静の笑顔、泣いている顔、怒っている顔……そのすべてを、私は大切に、宝物のように保存している。
顔を上げて、その写真を見る。
写真のなかの小静は、可愛く笑っている。
ああ、そういえば、小静がこんなふうに笑ったのは、一年以上前になるだろうか。
一年前のあのことから、小静はもう、こんな屈託のない笑顔を見せなくなった。瞳が濁り、口元をわずかに上げるだけの微笑みしか浮かべなくなった。
それでも私は耐えられた。待ち続けられた。写真のなかのように、また笑い始めるまで、ずっと。ほかの誰かを探すことなど、考えもしなかった。
燃える線香の匂いが、鼻腔に絡みつく。
香りが身体に染み込み、自分がみるみる空洞になっていくように感じる。気づかないうちに、少しずつ奪われている。残された私は、きっと空っぽで透明で、触れることさえできない存在なのだろう。
周囲の人の服は白と黒ばかりで、私たちの制服だけが緑だ。色まで、目の前から奪われていく。
ああ、そうだ。こんなふうにそぐわない世界で、私は少しずつ置いていかれるのだろう。
「和亮」
呼びかけた相手を見る。痛みを滲ませた顔の紀一だった。
「……来たよ」
「当たり前だろ。クラスのみんな、来てる」
紀一の言うとおり、クラスメイトは全員来ていた。ほかのクラスで、以前小静と仲の良かった友達も来ていて、それに……
## 終章
そういえば、こういうやり方があるらしい。特定の相手に気持ちを伝えるために、手紙をガラス瓶に詰めて海へ投げ、海流に運ばせる。でも、その手紙が誰かの手に渡る可能性さえ、すでに限りなく低い。まして特定の誰かに届けたいとなれば、絶対に不可能だと言っても過言ではない。
私の恋は、その漂流瓶と同じだ。どうにもならず、実を結ばず、絶望的だ。
あの人には、すでに想い人がいる。それだけでも十分に絶望なのに、よりによって親友の穂純までが、恋敵として前に立ちはだかっている。
本当に、私にはもうどうしようもない。
心のなかで「頑張れ!」と唱えてはみるものの、どう考えても無理がある。この恋が花開く可能性は、私ひとりで日本をひっくり返す可能性より低いと思う。もともと異性とうまく話せないし、涌井先輩や穂純みたいに綺麗でもない。いつもぼんやりしていて、成績も平凡。家が裕福だって? そんなものは、私の魅力じゃない。
そう、私には何もない。ただの子供だ。
穂純とだけ付き合いのある私が、どうして彼女を裏切り、涌井先輩の影を乗り越え、最後に先輩のそばへ辿り着けるというのか。ゴール寸前の走者たちを、一周遅れた私が次々と追い抜いていくようなものだ。
それでも、恋がこれほど望みのないものであっても、私の気持ちは本物だ。
誰よりも先輩を愛している、という自信がある。本当に、涌井先輩よりも、穂純よりも強い想いを持っている、と信じている。
一目惚れ。母は「……
## あとがき
新旧の読者の皆さま、こんにちは。御影瑛路です。
デビュー作と同じく、今回の作品にも挿絵はありません。こんなに出しゃばってしまって、本当に申し訳ありません。もともと私は、影でいるのが好きな(名前を見れば分かるでしょう)内向的な人間なんです。本当に。デビュー作の発売翌日、電車で隣の席の人が自分の小説を読んでいるのに出会って、恥ずかしくて顔を背けてしまったほど、内向的なんです。
では、今回の作品を少しご紹介しましょう。
本作は基本的にデビュー作と同じく、自分の興味から書いた物語です。もちろん細部には違うところがたくさんありますが、同じ書き手のものと一目で分かるはずです。最大の違いは、構成にもっと手をかけたところでしょうか。
登場する主人公たちは、たいてい不器用な人たちです。「不器用な人たちをこの物語に置いたら、こうなるんじゃないか」と考えながら書きました。それに、読者の皆さまには、主人公たちをフィクションに登場するキャラクターとしてだけ見ないでほしい。もちろん、これは作者としてのわがままな願いですが。
体裁については、自分でもうまく説明できません。個人的に、こうと限定された物語を書くのは好きではありません。もちろん、そのやり方には相応のリスクもあります……。ただ、小説にはさまざまな側面があって、どの面を重視し、どの面を重視しないか、作品全体のバランスを取ることがとても必要です。
今回の作品は『神栖麗奈はここにいる』。来月は『神栖麗奈はここに散る』を刊行します。新作と本作は、それぞれ独立した作品であり、上下巻ではありません……
ほかのドラマ
この物語と同じジャンルの作品はありません。下にあるのはサイト上のほかのドラマで、本物語の映像化ではありません。