オリジナルの物語設定
攻撃魔法が使えない魔法使い
読み始める →原題: 不能使用攻击魔法的魔法师
テレビとパソコンの差がほとんど消え、多連網コンピュータ(多連想ネットワーク・コンピュータの略)が、当然のように次の……
オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。
紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:
物語
## 序章「glorious world」
校正:Lilian
スキャン:小葉
これは、テレビとパソコンの差がほとんど消え、多連網パソコン(多連想ネットワーク・コンピュータの略)が当然のように次世代の映像受信機となった時代のことだ。
デジタルゲームについて言えば、いまのオンライン上で人気のないゲームは、ほとんど絶滅したも同然である。
ネットワークを通じて多数が同時に参加するゲームのプレイヤーを筆頭に、公式から配信される不具合修正のサポートだけでなく、攻略支援といったネットワークサービスまで存在する。ゲームそのものも、当然のように販売されている。
ゲームをする人たちに「この世界でいちばん有名なゲームは何?」と尋ねれば、十人中八人は「グローリアス world」と答え、一人は『memory of other world』と答えるだろう。
『glorious world』の正式名称は『memory of other world』、簡単に言えば「異世界の記憶」であり、およそ五年前に公式が発表したゲームだ。
『glorious world』と呼ばれるようになったのは、『memory of other world』の総合デザイナーのネット上の名前がグローリアス・アルカディアだったから、その名がついた。
当時最先端のコンピュータ技術を用い、精密に作り上げられた世界は、同時に「世界で最も……
## 新たな人生篇
三歳:「朝、目が覚めて……」
昏睡していた意識がゆっくりと浮かび上がり、僕は目を開けて目覚めた。
体を起こし、ベッドの端へ這っていく。
うまく体を回し、床に足をつけてベッドを降りた。
ゆっくりと寝間着を脱ぎ、ベッドの脇に積み重ねられた服へ手を伸ばす。
慣れないうちは時間がかかったが、今では一人でも、どうやら着替えられるようになった。
着替えを終えると、ぱたぱたと部屋の姿見の前まで歩いていく。
鏡に向かって微笑むと、鏡の中には可愛い子どもがいて、こちらに微笑み返しているのが見える。
『我思う……ゆえに我あり……』
記憶の底に残っていた哲学の名言を、つぶやく。
これは物心ついてから、毎朝続けている行為だ。
そろそろ、こんな日課はやめたほうがいいのかもしれない、と僕は思う。
なぜなら、今のこの状況は決して夢ではなく現実であり、僕もそれを認めるべきだからだ。
僕の名前は大杉健太郎。だが、大杉健太郎という名前から少しは推測できるように、それは黒髪黒瞳の生粋の日本人で、ちょうど二十歳の大学生だった。
淡い金色の髪に、美しい青い瞳、西洋人形のような三歳の赤子であるはずが、絶対にない。
ついでに僕の事情を説明するなら、「前世の記憶を持ったままの転生」だ。
最近になって急に、「前世の記憶」をはっきり認識できるようになった。
元の世界の雑学によれば、人間の脳は生まれてから三歳になるまで、内外からの刺激によって……
## 新たな家族篇
五歳:「お客さんが来た」
今日は森の季節、第四巡の第七日
この世界に生まれてから、すでに五年と二季節が過ぎた。
「わあ、アイラさん、すごく綺麗」
「ユウちゃんもそう思う? やっぱり女の子は、着飾れば綺麗になるものね」
母上に呼ばれて来たこの部屋では、アイラさんが礼服を着て鏡の前に立っているのが見えた。
アイラさんはもともと華奢な美人で、薄化粧をほどこし、うっすらと白粉を引き、口紅を少しだけ塗り、深い緑の光沢をほんのり帯びたしなやかな礼服を合わせると、本当にとても綺麗だった。
「母上、この礼服はどこから?」
「ええ、これは私が愛しい人と結婚したときに着たものよ」
「お、奥様……やはりこのお召し物は、私には高貴すぎます……」
さっきからアイラさんがこんなに静かだったのは、ただ緊張していたからなのだ。
アイラさんは普段、厳しい眼差しを保ち、身の回りには冷静で謹厳な空気を漂わせている。けれど実際は外見とは逆で、よく平地で転び、馬に触れるのも怖がる、心の優しい可愛い人なのだと、僕も最近になって知った。
「そんなことないわ、とてもよく似合っているでしょう? それとも、私が着た服は着たくないの?」
「ぜ、絶対に違います。ただ、普段からよくしていただいているのに、今回はこんなに綺麗なお召し物までお貸しいただいて……」
「こちらこそよ。アイラちゃんは毎日毎日、こんなに世話を焼いてくれるんだもの。貸すどころか、礼服をアイラちゃんに差し上げたって……
## 王都篇
今日もまた、双子の月が夜空にかかり、美しい光を放っている。
小さいほうの月はレーナ、大きいほうの月はティーナと呼ばれ、それは伝説に登場する双子の月の精霊の名でもある。
飛行の高度を調整し、最近ではすっかり慣れたバルコニーへ降り立った。
それから、身にまとっていた飛行魔法と透明化の魔法を解く。
いつもなら、彼のほうが先に来て、ここで待っているのに……。
かちゃり、と隣の扉が開いた。雪のように白い髪の少年が、バルコニーに現れる。
彼の手には、茶器を載せた盆がある。
【もう来ていたのか、ユーリ。待たせて悪かった】(ここでのユーリはこれで全部だ。声の調子にも変化がある。亜を書き落としたわけではない)
【いいえ、私もちょうど着いたところです。それより、その手にあるのは?】
【そうか、それならよかった。ああ、そうだ。ちょうど珍しい茶葉を手に入れたので、ユーリと一緒に飲んでみようと思ってね。
このあいだに、美味しい菓子もたっぷり用意したんだ。だから怒らないでくれ】
【少し待たされたくらいで、怒ったりしていません。それに、そういうことはあまり気にしません。
それより、私のことを食いしん坊だと思っているのでは?】
【違うのか?】
【フェルの中で、私がいったいどんな存在なのか、きちんと話しておく必要がありそうです】
いまここに立っているのは、ユーリアでもなければ、フェーンでもない。
ユーリを名乗る私と、フェルを名乗る彼、二人だけ……
## 学園都市篇
僕は慎重に剣を鞘から抜き、鞘をそっと脇へ置いた。
刃は映り込んだ灯火を反射し、ほんのりと光る。
用意しておいた端布に古い油を含ませ、剣身を丁寧に拭っていく。
そのあと、きれいな布をもう一枚取り出し、特製の油を垂らして、剣身に薄く塗り広げた。
金属を守り、錆びさせないために調合されたこの特製の油は、僕にとって姉のような、旧友のような錬金術師が作ったものだ。
こうしてこの剣の手入れをするのは、これで何度目だろう。
年に二、三回として、もう四十回近くになるだろうか。
いない彼の代わりにこの剣を抱き、枕を濡らした日々も、もう昔のことと言っていい。
それでも、何かを思い出したように、使う当てもない剣をこうして手入れしてしまう。未練も、そろそろほどほどにすべきだろう。
僕にとって、これは贖罪なのだろう。
罪の償いとして、赦しは求めない。
剣を手入れすることも、彼のことを忘れないための、再確認の儀式だ。
これは自己満足でしかない。
彼がまだ生きていたなら、きっと困ったような笑みを浮かべ、一言で僕のことを赦してくれただろう。
なにしろ彼は、女と子どもには強くなれなかった。
それに、孤児だったからこそ、家族への想いが強かった。
彼が死んだとき、僕もすぐに後を追おうと思った。
けれど僕を止めたのは、当時まだ錬金術師の卵だった彼女だ。
【……
## あとがきのようなもの
「攻撃魔法が使えない魔法師」の連載について
ご無沙汰しております。絹野帽子です。
今回は、「攻撃魔法が使えない魔法師」の書籍化と、現在の連載についてご報告いたします。
「攻撃魔法が使えない魔法師」の書籍化については、出版社が書籍化に反対する立場との食い違いから条件が折り合わず、二巻以降の刊行予定はすべて中止となりました。これに伴い、ウェブ連載の「攻撃魔法が使えない魔法師」も凍結いたします。
この結果につき、ここまで読んでくださった皆さま、支えてくださった皆さまには、大変申し訳なく思います。
私自身も、ユーリアたちのことをまだまだたくさん語りたかったのですが、いろいろと考えた末、これが最善の判断だという結論に至りました。
「攻撃魔法が使えない魔法師」は、連載開始から一年にも満たない短い期間ながら、多くの方に励ましていただいた作品です。速いペースで更新できたのも、読者の皆さまの声援があってこそでした。本当にありがとうございます。
「攻撃魔法が使えない魔法師」は終わりましたが、私が本を書くことをやめるつもりはありません。これからも、強く書きたいという気持ちを抱いていきます。今回の経験を携え、新しい物語とともに戻ってこられたらと思います。
何か活動を再開する際は、ブログで事前にお知らせします。また、今回の件の詳しい報告も、ブログのほうをご覧ください。
これまでたくさんの声援をいただき、本当にありがとうございました。
ここまで……
ほかのドラマ
この物語と同じジャンルの作品はありません。下にあるのはサイト上のほかのドラマで、本物語の映像化ではありません。