オリジナルの物語設定
守護天使
読み始める →原題: 守护天使
なんて心地よい感覚だろう。身体はふわりと宙に浮かんでいる。上下もなく、左右もない。しぼんだ風船のように、温かな暗闇のなかを漂っていた。これはきっと夢だ。自分が飛んでいる夢を見るのは、ずいぶん久しぶりだった。一回転してみよう——そう心のなかで思ったとたん、身体はゆっくりと傾きはじめた。足元の山なみはゆるやかな稜線を描き、地平の向こうまで続いていた。夜の下層は鮮やかな緑。梢は風に吹かれ、海藻のようにうねっている……
オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。
紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:
物語
## 序章
好心地よい感覚。
身体がふわりと、空中を漂っている。
上下もなく、左右もない。
しぼんだ風船のように、温かな暗闇の空間に浮かんでいる。
これは夢に違いない。自分が飛んでいる夢を見るのは、久しぶりだ。
ひとまわり、回ってみよう——
心の中でそう思った途端、身体がゆっくりと傾き始めた。
足元の山々は緩やかな稜線を描き、地平の彼方まで連なっている。
夜の底は、鮮やかな緑だ。
梢は風に吹かれて、海藻のようにうごめいている。
無数の星が空に瞬き、ガラスを削り出したような弦月がかかっている。
夜空がこれほど眩しいとは。
星々は撒き散らされた宝石のようにきらめき、星と星のあいだを灰色の光が埋めている。
彼は空中で、わずかに動いてみた。
星が銀の筋となって後方へ流れ、空気の抵抗はまったく感じられない。
思うように動かなかった左足のことを思い出し、思わず声を上げて歓声をあげた。
夢の中なら、思う存分走ることができる。空を飛ぶことさえできる。
螺旋を描いて上昇し、冷たい光を放つ弦月へと迫り、ジェットコースターのように急旋回して、急降下する。
夏の夜空を滑空し、指先で、山腹を覆う梢の葉先にそっと触れる。
夢の中の自分は、超能力を持っているのだろうか?
周囲は漆黒で、懐中電灯の光さえない。
では今、空を飛び、思考し、震えているのは、誰なのか?
ざ、ざ、ざ。
死んだぼくは、いったい「誰」なのか?
あまりに暗いため、男の顔立ちは見えない。だがその顔は……
## 追憶
ここは暗く、温かく、じゅうぶんに湿っている。
一瞬、前の夢の続きではないかと恐怖を覚えた。だがここはあの悪夢とは違い、確かな安心感を与えてくれる。彼は身体を曲げ、手足を丸めて、ほとんど身体に密着するほど極端に狭い空間にいた。全身が、薄く強靭なプラスチックの皮膜にきつく縛られているように感じた。
目を開けても、遠近感のない温かな黒い影しか見えない。口の中が、なぜか塩辛い。舌先を動かすと、歯茎には歯が一本もなく、口いっぱいに微温の塩水が広がっていた。彼はその不思議な香りをゆっくりと味わい、当然のように塩水を飲み込んだ。下腹部が膨らみ始めると、ためらうことなく、自分が浮かぶ液体の中へ排尿した。
意識を取り戻してから一度も呼吸していないことに気づき、恐慌に襲われた。だが窒息感はない。胸郭は呼吸に合わせて膨らむどころか、肺まで塩水で満たされているようだった。耳元では血流の大きな轟音が響き、それがかえって安心させた。外界の会話が、何層もの膜を隔ててかすかに届いてくる。腹部から伸びる細い管が脈打ち続け、栄養と酸素を送ってくる。心配はいらない。ここは安全だ。あの悪夢とは違う——彼は安心して眠りに落ちた。
そして、定められた時間の領域の中で、彼は振り子のように、すでに過去となった未来へと投げ込まれた。
◎
ふたたび目を覚ますと、周囲の世界は激しく揺れていた。
大変革が始まろうとしている。肉の壁に圧迫され、左足の先が内側へ曲がり、かすかな痛みを感じる……
## 現在へ戻る
夜の空、温かなそよ風、弦月と星々の眩しい光が、直視できないほど迫ってくる。
ここはどこだ?
純一は、先ほどのような確かな肉体の存在を感じ取れない。
彼はゆっくりと、空中で一回転した。
足元では幾重もの山並みが地平線まで続き、夜の緑の葉が風の中で波打っている。
ここは、悪夢が始まった場所だ!
また起点に戻ってしまった。
なぜ殺されたのか?誰が殺したのか?どんな手段で?そのすべてが、いまも解けないままだ。追憶の過程が、自分の死の謎を解いてくれると期待していた。
純一は温かな夜空に浮かび、失われた結末に寂しさを覚えながら、自分が死んだという事実を疑いなく受け入れた。人生の断片をたどり直したあと、彼はついに悟った。自分の人生は退屈で、何の価値もない。純一の死を嘆いて涙を流す者は、おそらく誰もいないだろう。家族も、友人も、恋人もいない。契約で結ばれた愛人さえいない。誰も愛さず、誰にも心を開かなかったのだから、泣いてくれる者がいるはずもない。
純一は自分が哀れだとは思わない。やり直せるとしても、より充実した人生を選べるとも思わない。結論は単純だ——こういう人間は、死んだほうがいい。純一は夜の森を見下ろす。動物や昆虫の鳴き声は、交通のラッシュアワーのように騒がしい。生命の世界に、もう触れることはできないだろう。生きるために殺し合い、終わりのない順位争いと地位の奪い合い——文明化した人間社会も、じつは……
## 天使の攻撃
新しい年が始まったばかりのころ、一報の臨時ニュースが純一の注意を引いた。
佃のアパートで新年の深夜番組を見ていると、画面の上部に突然、ニュース速報の字幕が並んだ。
映画監督・木戸崎剛(67歳)、緊急入院。
木戸崎監督は現在、時代劇の新作『SODO——騒動』を制作中である。
さらに情報を得ようと他局へチャンネルを回したが、映画の制作費の一部を出資しているテレビ局を除いて、木戸崎剛監督の緊急入院に触れるところは一局もなかった。まるで、その知らせにはニュースとしての価値がまったくないかのようだった。
純一は瞬間移動で木戸崎プロダクションに着き、連絡係のスタッフが見つかるかもしれないと思った。空白の意識から目覚めると、目の前にあったのはスチール写真のコラージュだった。文緒はカウンターにいない。奥の部屋から、木戸崎渡のしゃがれた声が聞こえてくる。
「大した問題はないはずです。いまは元気で、機材を病室に運び込めと騒いでいるくらいです。編集は終わっています。アフレコが済めば、映画は完成です。じっくり養生させる前に、せめて『騒動』だけは仕上げてもらわないと、売れませんから」
木戸崎プロデューサーは無表情のまま、作り笑いを浮かべた。パジャマの上にセーターを着て、その上にさらにスポーツジャケットを羽織っている。部屋には彼ひとりで、額の汗を拭いながら電話に応対していた。
「お花を? それはどうも……明石町の聖路加国際病院、812号室……
## 尾声
彼は目を覚ました。
頭上の無影灯は、千の太陽のように輝き、
光に慣れていない目と肌を、ほとんど焼きそうだった。
初めて吸い込む外の空気はひどく冷たく、
羊水に濡れた気管と肺のすみずみまで侵入してくる。
彼は戻ってきた。
不安と苦痛が永遠に存在するこの世界へ。
感覚への刺激は過剰なほど強く、感情はひどく鈍いこの世界へ。
彼は戻ってきた。
無意味な順位づけと、
途中で投げ出すことのできない
幼稚な競争を、一生見つめ続けなければならない。
小さな胸を必死に張り、
この世界への最初の挨拶をするために、
全身を震わせ、最大の声で泣いた。
ほかのドラマ
この物語と同じジャンルの作品はありません。下にあるのはサイト上のほかのドラマで、本物語の映像化ではありません。