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駅にいる神様

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原題: 车站里的神明大人

駅にいる神様 — 物語のイラスト
作品紹介のカバー画像 · AIで制作したイラストです。原作の公式表紙ではありません。

駅にいる神様。挿絵:https://www.bilinovel.com/novel/1399/117255.html

オリジナル小説です。登場人物と出来事は架空です。

紹介の編集: 黄果ショートドラマ · 更新日:

物語

## 挿絵

## 序

台湾版 転載元・軽之国度

燕町駅の構内には、神様がいる。

そんな噂が、二〇一五年に入ったばかりのころ、広がっていった。

あるニュースサイトに載った短い特集が、この噂のきっかけだった。

現代では、情報は文字どおり千里の先まで届く。関連情報を集めるサイトが立ち上がると、数日もしないうちに「神様」のブログの閲覧数は数十万に跳ね上がった。

けれども、瞬く間に広がり、同じ速さで飽きられてしまうのが、現代の情報の特徴だ。

ブラウザのブックマークにそのサイトを入れたわずかなファンを除けば、ほとんどの人は、そんな記事があったことさえ覚えていない。

残ったのは、神秘のヴェールに包まれた、都市伝説めいた噂だけだった。

燕町駅の駅のなかに、神様がいる。

## 第一話 後ろ姿

午後、綿毛のような雪が空から絶え間なく舞い落ちていた。それでも燕町駅の構内は人の熱気であふれ、やや息苦しいほどだった。

『ただいま、本日の降雪により、列車の架線に異常が生じております。燕町駅を始発および終着とする各線は、現在、状況を見ながら一時運転を見合わせております。ご利用のお客様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。』

バルマカーンに身を包んだ体をすくめ、改札でICカードをかざしてすばやく通り抜ける桜庭良一は、踏み台の上に立つ駅員のアナウンスを聞き、疲れきった顔を上げずにはいられなかった。

電車が止まった? こんな時間に?

残業で何日も会社に泊まり込んでいた彼は、もう三日、家に帰っていなかった。金を積んででもグリーン車に乗り換えるしかない——そう思った、次の瞬間。

構内のあちこちの放送から、先ほどのアナウンスと同じ内容が流れてきた。

東京都燕区にある燕町駅は、南口が地下鉄の駅へ、北口が都市特急の駅へとつながるほか、毎日何十万人もの人が行き交う、首都圏でも有数のにぎわいを見せるターミナル駅だ。乗り換えのためだけでなく、周辺にはオフィスビルも少なくないため、この駅で乗り降りする人は多い。そうした乗客を受け入れるために造られた広いコンコースは、いま、家に帰れない会社員たちでぎっしりと埋まっていた。

その人波に加わった桜庭は、人の熱気でしわくちゃになった襟元を緩め、そして……

## 第二話 視線

また見ている。

両手でネモフィラの鉢を一鉢ずつ持ち上げながら、林夏澄は開店準備に追われるなか、楓の広場を盗み見た。

燕町駅の「駅ナカ」には、背の高い楓が一本植えられている。ベンチに囲まれたその木の枝先には、すでに若緑の新芽が顔を出していた。エスカレーターと同じ煉瓦色のベンチに座れば、六角形の「駅ナカ」の全貌を一望できる。

高くそびえるこの楓は、自分が駅の中にいることを忘れさせる、大切な舞台装置だ。駅の中に大木があるという事実に、驚く人は多い。「駅ナカ」は線路の上にあるため、床一枚を隔てた下では、いつも列車が走り続けている。根の育ちの問題から、枝の剪定、落ち葉の掃除に至るまで、駅の関係者たちが力を合わせて一つずつ解決してきたからこそ、今日の姿がある。

その苦労は報われている。楓の広場のベンチはとても人気で、時間帯を問わず、誰かが楓に背を向けて座り、「駅ナカ」の景色を楽しんでいる。

そして今日は、朝早くから、背の高い少女がひとり、そこに座り続けていた。携帯電話をいじっているように見えて、実はずっと、広場の脇にある花屋「Blue blossom」を観察している。

違う。彼女が見ているのは花屋そのものではなく、林夏澄という一人の店員だ。

その視線に気づいてから、すでに一週間が経っていた。下心のある男の視線とは違い、敵意に満ち、首筋を刺すほどの……

## 第三話 嘘

「よう~、今日は何か変わったことあったか?」

この日遅番の絹野茂里は、職員専用改札の脇にある警備員室に足を踏み入れた。

守下良吾は、このおじさんが苦手だった。まず、全身が煙草臭いに染みついている。次に、歳とともにこびりついた体臭がきつい。定点でも巡回でも、いつもへらへら笑っている。ただ、そうしたところが嫌いなだけなら、守下がこの人を苦手とするほどではなかった。

「いえ、特に何も。」

「なんだよ、冷たいじゃねえか~。もっと口角を上げろよ。その仏頂面を見たら、ほかの職員の機嫌まで悪くなるぞ~」

「……うるさいな……」

わざと絹野に聞こえる声でそう返したのに、彼は聞こえないふりをして、モニターの画面を見つめるだけだった。

そういうところが、守下には苦手だった。二十年も警備をやっていると聞く彼は、守下やほかの同僚の前で、いつも先輩面をする。何がそんなに自慢なのか、守下にはわからない。バイトで二十年やってきただけではないか。

守下は心の中で、煙草臭い絹野の息を疎ましく思いながら、駅を出入りする業者や職員に声をかけた。職員専用改札を通るとき、きちんとICカードを出してタッチしているか、通行証を確かめなければならない。とりわけ前者だ。毎日必ず一、二人はタッチを忘れるので、特に注意が要る。たった一人でもタッチせずに改札を通れば、……

## 第四話 思い出

白く塗られた鉄の車両を降りた途端、めまいが込み上げてきた。

冷房の効きすぎた車内と、盛夏の陽射しにさらされ続けるコンクリートのホーム。その激しい温度差に驚いた三波薫子は、よろめく足取りでホームに降り立った。次の瞬間、降り急ぐ乗客に後ろから押され、危うくバランスを崩しそうになった。

こうなるとわかっていたなら、何年も着ていなかったこの黒いワンピースを、見栄で着るべきではなかった。靴もそうだ。このハイヒールより、いつものフラットシューズを履いてくるべきだった。

ようやく上の駅コンコースへ続く階段の入り口にたどり着いたとき、三波は手すりにつかまり、そばの人たちが大きな足音を立てて急いで上っていくのを見ていた。

「……若い人は、本当に元気ね。」

六十の坂を越えてから、体は以前のように自由に動かなくなり、遠くへ出かける気もだんだん失せていった。暑さにやられて一歩も動けなくなった三波は、階段に腰を下ろし、この人波が引くのを待った。

ホームに立つ若い駅員が、自分に一瞥をくれたのはわかっていた。他人の視線に対して、年長者は若い人が思う以上に敏感だ。いいじゃない、少し休ませてよ。三波は心の中でそうつぶやき、それからため息をついた。

昨夜は、ほとんど一睡もできなかった。先ほどのめまいに加え、何年ぶりとも知れない満員電車。疲れきった三波は、知らず知らずのうちに深く眠り込んでいた。

「おばあさん、おばあさん。大丈夫ですか?」

見知らぬ男の呼び声で、三波はぼんやりと目を覚ました。

……

## 第五話 駅の素描

十一月七日、

「駅ナカ」開業十周年を記念して、

当駅にて「燕町駅の神様」個人画展を開催いたします。

当駅を主題に描かれた三百点余りの作品。

この十年、黙々と

燕町駅と「駅ナカ」を見つめ続けてきた彼が、

ここに公開する

個人創作の軌跡。

会期中、

「駅ナカ」そのものがギャラリーです。

「駅ナカ」十年の物語は、

色とりどりのイラストとなり、

ここのあらゆる壁を、

そしてあらゆる柱を彩ります。

中神のイラストを背景に、見ていて心が落ち着く書体で組まれた、数行の宣伝コピー。

楓の広場のベンチに座る中神は、四つ折りにされたチラシを眺めていた。

口元には、もう諦めたような笑みが浮かんでいた。

駅員のアナウンスが、燕町駅のコンコースから聞こえてくる。

『本日は強い台風の接近により、当駅の列車は本数を減らして運行いたします。今日の午後から明日の朝にかけて、運行時間は大幅に遅れ、または多くの列車が運休となる見込みです――』

よりによって、どうして今日なんだ。中神はそう思い、顔を上げて「駅ナカ」に入ってくる客を眺めた。誰の手にも、傘が一本はあった。

そして、ふいに感情が胸に込み上げた。

「でも、嘘はついてないよ。」

父がひどく驚いた反応に、中神は少し誇らしかった。もう三十歳の彼のなかに、このとき子供のような考えが湧いていた。

金曜の夜、人はたいてい……

## あとがき

まだ小学生だったころ、家の近くの駅には掲示板があった。

当時住んでいた街には駅がなく、家から一番近い駅までは、バスで十五分かかった。僕にとって電車は、「よその県や市へ行く」ときに使う乗り物だった。それでも駅の近くにはゲーム専門店や、ハンバーガー店のあるショッピングセンターがあったので、わりとよく足を運んでいた。

祖父母やほかの親戚が家を訪ねてくるとき、家族みんなで駅まで迎えに行ったこともある。

初詣を終えて帰る道、この駅に着くと、いつも「やっと帰ってきた」という気持ちになった。

駅の掲示板にはよく、「落とし物 定期券 ○○様」というような掲示が出ていた。そのたびに、なぜだか僕は笑みを浮かべていた。

大人になり、ひとりで外に暮らし始めてからは、この駅で降りることはほとんどなくなった。

それでも今も、心のどこかで、あれが「うちの駅」だと思っている。

あなたにとっての駅は、どこにありますか。

そんな問いを胸に、この本を読んでいただけたなら、作者としてこれ以上の光栄はありません。

以下、謝辞です。

担当編集の黒崎さま。今回の作品も、たいへんお世話になりました。

取材に協力してくださったみなさま。今回の経験から、多くのことを学びました。

執筆にあたり、さまざまな資料を参考にしました。その著者の方々にも感謝します。

そして、駅に集うすべての人へ。あなたがたが、物語の土台を与えてくれました。

ありがとうございました。

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